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Erlkönig 魔王



10年近く入院している男性患者さんのお父さんとお話ししました。お父さんは息子がこういう風になったのは、自分の愛情が足りなかったせいかもしれない、というようなことを話していました。

お父さんは息子が小さい頃は長期海外出張や単身赴任を繰り返し、ほとんど家にいなかったのだそうです。その分、お母さんが一生懸命に補おうとして、熱心にピアノや塾に行かせていたそうです。私が「お母さんでは補えないですよ」と言うと、お父さんは「わかってます」と答えていました。

そして中2で転校した後は不登校が続き、引きこもり数年ののち、入退院を繰り返し、今は長期入院中です。そのお父さんがクラシック歌曲が趣味だというので、シューベルトの「魔王」を思い出しました。

「魔王」は、父が息子を抱えて家まで馬を走らせている途中に、魔王が襲ってきて息子が取り殺されてしまう、という歌です。息子が必死で「お父さん、魔王が襲ってくるよ!」「怖いよ!」と訴えているのに、父は「あれは木々が揺れてるだけだよ」と言って信じようとせず、結局家に着いたら息子は死んでいた、というのです。息子の必死の声を無視した結果、息子を守りきれず魔王に取られてしまった父の話です。

現代でも魔王はいます。父を家から引き剥がして仕事に駆り立て、それを良しとする「仕事がすべての仕事人間が一番えらい」という風潮を作り出し、結果的に家制度を破壊しようとした人たちです。

転勤や単身赴任は、非人道的な制度だと思います。高度経済成長か何か知らないけど、ここまで家族を犠牲にして働いてきて、私たちに一体何が残りましたか?

今の日本には魔王に取り殺された息子を持った父が無数にいます(涙)

シューベルト「魔王」

https://youtu.be/zCNDBNQj868


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