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イルミナティ式子育て その3


女性も社会に出て仕事をすることが”当たり前”という風潮になってから、だいぶ長い年月がたちました。大正6年に日本に粉ミルクが登場したあたりから、じわりじわりと母を子どもからひきはがす作戦が綿密かつ緻密に実行されてきたと私はにらんでいます。こうして今では母はおろか、祖母でさえもイルミナティ式子育てしか知らないという事態になってしまいました。

17歳のその子は、母よりもずっと背が小さく(頭ひとつ分くらい小さい)、とても幼く見え、無表情でとても小さい声で話し、不登校で友だちがおらず、引きこもりで家の中で暴れ、自分が自分でないような感じがして”素”の自分がわからないと言い、自傷行為をするとスーッとすると言い、死にたいと言って大量服薬をしました。

母はその子を産んで2週間で仕事復帰したそうです。母はそうするもんだと思っていたそうです。実は母の母、つまり祖母も母を産んで2週間で仕事復帰したそうで、母は「それが当たり前」「まわりの人もみんなそうしている」と思っていました。

祖母が自分の子を自分の母に育てさせたように、母も自分の子を自分の母に育てさせました。母もその子も当然、粉ミルクで育ちました(祖母は母乳で育っています)。母は「私はおばあちゃんの背中で育った」と懐かしそうに言いました。母は「自分は愛情不足ではない」と美しい笑顔で言い、自分の子を振り返りました。

でもその子は明らかに愛情不足です。恐ろしいことに愛が不足すると、心だけでなく体も育たないのです。母は仕事復帰後すぐに転職し、超多忙な職場に変わります。毎日新しいことを覚えなければならず必死でついていき、疲労困憊して家に帰ってくると子どもたちがワーッとまとわりついてきて、家事育児をしなければなりません。

母は仕事と家事と育児とでいっぱい、いっぱいになり、うつ状態になったと言います。やつれはててワーッと泣き出したり険悪になったり、「限界だった」と振り返りました。この頃のことをその子は「お母さんはいつも険しい顔をしていて、話しかけても答えてくれなかった」と言っていました。

「自分にとって何を一番大切にしたいか、優先順位をつけようと思わなかったの?」と私は聞きました。私自身は自分がほしくて産んだ子だし、私が仕事を100%力いっぱい限界までこなせば必ず弱いほう(子ども)にしわ寄せが来ると思ったので、キャリアをあきらめていたからです。

でもその母は答えました。「仕事も家事も育児も、全部するのが当たり前だと思った。」

祖母は祖母でジレンマを抱えていました。自分の母がそうしたように、自分も孫守りしなきゃいけないと思って孫の誕生と同時に仕事をやめました。職場ではずいぶん惜しまれてやめたそうです。でもいざ子育てといっても自分には経験がありません。祖母も産後すぐに自分の母に子どもを預けて仕事に出たからです。

子育てというのは、子ども中心に子どものペースで自分が暮らすということで、決まった食事時間にきちんと食事するとか、トイレに行きたいときにトイレに行くとかいうこともままならないものなのです。たぶん祖母はその辺のことをやったことがなかったでしょうから、自分のペースをかき乱されておおいにストレスを感じたことと推察されます。

そして「この孫のために仕事をやめなければならなかった」という思いも抱いたかもしれないし、「自分は預かっているだけ。しつけやその他は親の仕事だ。」と言って、夕方親が帰ってくるとすぐに子どもを親のほうにやりました。土日祝日も親の担当でした。親は疲れて帰ってきても休む間はありませんでした。(「子どもの押し付け合いやね」と思わず言ってしまいました。)

父は婿養子でしたから、ずっと「お父さんはいいから」と言われはずされて暮らしていました。職場でも認めてもらえず面白くなく、「家帰って酒飲んで寝るだけ」の生活を続けていました。「考えたくない」のだそうです。

つまりこの家では大人がみんな自分のことで精いっぱいで、誰も親身になって子どものことを考えてあげていなかったのです。その子が「本当は愛してほしかった。でも無理だとわかった。」と言っていたのが、とても悲しくてなりません。


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