• Ishikawa-legi

イリスさん


イリスさんは、20年以上前に私が初めてヘブライ語を習ったときの先生だ。あの頃私は、旧約聖書が元々はヘブライ語で書かれていると聞いて、それならちゃんと原語で読んでみたいとずっと思っていた。そして教会の廊下の掲示板に「ヘブライ語教えます」と張り紙がしてあったのを見つけて、電話をかけてみたのだ。

電話に出たイリスさんは、地元の大学に留学しているユダヤ人の学生で、気安く「どうぞ、どうぞ」と言ってくれた。なので次の週から毎週、小さかった子どもたちを連れてイリスさんのお宅にお邪魔してヘブライ語を習うようになった。それから3年ぐらいは通ったと思う。

そして今になって子どもたちが言うのだ、「イリスさんは男だ」と。

「えーーっ!!!」私にとっては晴天の霹靂だ。私はてっきりイリスさんは女だと思っていた。だって”イリス”は日本語でいうアイリスという花の名だし、赤い線の入った白い靴下はいていたし、背も私と同じくらいだったし、料理が上手だったし。

私はイリスさんは女だと信じて疑わなかったので、気をゆるして、あの時まだ小さかった下の子におっぱいをあげたりしていた。私とイリスさんが勉強中、そばで遊んでいた下の子はむずがると寄ってきておっぱいをねだるのだ。

そしてお腹いっぱいおっぱいを飲んだ下の子は、満足げな顔をして(パタリロそっくりな顔だったなあ)コテッと寝てしまう。

それから私は異国から来たイリスさんが困らないかと、いろいろ私なりにかばってあげたりもした。気を遣って世話してあげたりした。

それが男だったなんて!でもありうるかもしれない。そういえば肩幅がっしりしていたし、声も低かったし。子どもの目は案外確かかもしれない。

でも私は相手が男なら、あんな風に気をゆるしたり、かばったりしなかった。壁を作って構えたと思う。女同士と思っていたからこそ仲間意識があった。

何が言いたいかというと、女同士でつながるみたいに、きっと男も男同士で仲間意識が芽生えてつながるんだろうな、ということ。女には入れさせない、男だけのかばい合いや融通のし合いみたいことがバンバンあるのだろうな。

それが悪い方にころがって、今の混沌の世の中になった。世の中は男性社会だったから。

別に「だから男が悪い」とは言わない。男も女もお互いに協力してもっといい形になれるといいと思うのだ。


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